詩の日めくり 二〇一五年六月一日─三十一日/田中宏輔
と思っているらしい。「きみも詩を書きなさいよ、才能があるんだから」「あっちゃんみたいな才能はないよ。」「ぼくとは違う才能があると思うよ。むかし書いてたの、すばらしかったし。あの父親が否定したから書かなくなったんだろうけど。あの父親も、頭がおかしかったんだし、きみと同じでね。でも、きみを否定したのは間違ってたと思うよ。ぼくのことを否定していたことも間違っていたし。芸術をするのは、いつからでも遅くはないよ。才能がある者は書く義務がある。書きなさい。」と言った。弟は詩も書いていたし絵も描いていたのだ。父親に強く否定されて発狂したのだけれど、ぼくは否定されても、すぐに家を出たので、父親の言葉に呪縛されるこ
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