詩の日めくり 二〇一五年六月一日─三十一日/田中宏輔
は、オブセッションのように何度も見てるもの。偽の記憶だ。30代で記憶障害を起こしたときの記憶である。大学院を出たあと、高校に入り直して生活していたというものだ。当時は記憶が錯綜して、現実が現実でない感じだった。自分が魔術的な世界で生活している感じだったのだ。精神的現実が幻想的だった。ダブルヴィジョンは見るし、ドッペルゲンガーとは遭遇するし、夜中に空中浮遊しながら散歩していると思い込んでいたし、頭のうしろの光景もすべて目にしていたと思い込んでいた、狂った時期の記憶だ。とても生々しくて、まさに悪夢だった。合理主義者なので、それらが無意識領域の自我(あるいは、自我を形成する言葉や言葉以外の事物によって受
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