五人五色/道草次郎
 
ン」

汗を拭きとったトイレットペーパーの滓が
中指と薬指の間に挟まってなかなか取れないとき
僕のありふれた地獄は
もはやありふれたものではなくなり
僕の内部の芯にむかって収斂をする

どこかの高層ビルの1F
でっかい一枚ガラスに映った男
誰だ?
一瞬思うが僕は立ち止まらない
歩き続けることが僕の
「愛」だから
そして僕の「愛」はつねに歩き続ける

効きすぎの冷房と猛暑とのあいだに板ばさみとなり
心は混沌の極みにあるのに
ついて出る言葉といったら
どれもこれも中くらいに秩序立っているものばかり

僕は責任者であると同時に責任回避者であり
もはや僕の自在は
[次のページ]
戻る   Point(4)