五人五色/道草次郎
ン」
汗を拭きとったトイレットペーパーの滓が
中指と薬指の間に挟まってなかなか取れないとき
僕のありふれた地獄は
もはやありふれたものではなくなり
僕の内部の芯にむかって収斂をする
どこかの高層ビルの1F
でっかい一枚ガラスに映った男
誰だ?
一瞬思うが僕は立ち止まらない
歩き続けることが僕の
「愛」だから
そして僕の「愛」はつねに歩き続ける
効きすぎの冷房と猛暑とのあいだに板ばさみとなり
心は混沌の極みにあるのに
ついて出る言葉といったら
どれもこれも中くらいに秩序立っているものばかり
僕は責任者であると同時に責任回避者であり
もはや僕の自在は
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