五人五色/道草次郎
 

いいえそんなことやっぱりどうでもいいわ
冷たくなったあたしをひとり残して
きっと彼
死んだ女についての詩を書くために
紙とペンを取りに戻るんでしょうから



「画家」

直感は気泡だから
それを結晶させるためにわたしは筆を持つ

溢れ出した感情の噴水
それを克明に描写するのがわたしの役目

そんなわたしは
感じることに染まってはならない
わたしにはただ精緻さだけが美しい

すべてのものはわたしのなかで
ネジや歯車などの部品に分解される

そのとき世界は
新しく生まれ変わるだろう
はっきりと
乾いた音を立てながら



「サラリーマン」
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