にごり水もみず/道草次郎
 
まえて
君のとろこへいい香りの野の花をおくれそうにない
ごめん。声を埋葬する。

「屍体」

すでに飽和しそうな朝に溺れかかり
蒼空を顎でおすように必死で息をつぐ
オナガが来て庭のハナミズキで遊んでいる
じぶんはオナガのせかいの住人なのに
活人画風な挙動で立って歯を磨くこともできない
平らな脳のとおい地平のうえの一朶の雲のように
ぼくは酸素することも忘れ打ち寄せてしまう
このようなものの行き着く末を生活音に聴くが
世界の律動とともにそれがあるのは感じられない
だれも屍体には興味が無い
しかしそれを責める気にもなれない
無数にちらばったパズルをもう一度組み直し

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