詩の日めくり 二〇一五年五月一日─三十一日/田中宏輔
だった。
たとえば、それが電車のなかであったなら
急いで手のひらに、ポールや吊り革をぎゅっと握らせなければならない。
歩いている道やショッピングしている店のなかだと、
上着のポケットにすばやく手をすべり込ませなければならない。
知らないうちに、手のひらがひらくのだから
いつ、自分の意思を無視しだすかわからないからだった。
やはり、手のほうが、ぼくより個性があるのかもしれない。
戦地なのに幸せ。
センチなのに幸せ。
二〇一五年五月二十一日 「松井先生」
高校のとき、社会の先生に手を握られて教員室を飛び出しましたが、いま考えると、まだ23、4
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