詩の日めくり 二〇一五年五月一日─三十一日/田中宏輔
 
部屋にいたらね
ぼくは裸になって、ばかみたいに
鏡を前にしてさ
ぼくはシャツを首にひらひらさせてさ
自分に向かってやさしくつぶやくように、こう歌うのさ
「ぼくはひとりっきり、ひとりっきりなのさ
 ひとりっきりになるために生まれたのさ
 こんなに最高な気分ってないよ!」って。
歪んで小さくなった、その黄色いぼくの影たちを背景にして
ぼくは、ぼくの両腕を讃える。ぼくの顔を讃える。
ぼくの両肩を讃える。ぼくの横っ腹を讃える。ぼくのお尻を讃える──

ぼくが、ぼくの家族のなかで
ぼくが最高に幸福な天才じゃないって、だれか言えるひといる?

  〇

 塾の帰りに、ブックオ
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