詩の日めくり 二〇一五年五月一日─三十一日/田中宏輔
て「こんど、男同士の話をしましょう」と言ってきて、でも、そのあまりの積極性に、ぼくの方がたじたじとなって、消極的になってしまって。あのとき、どうして、ぼくは、彼のことを受けとめてあげられなかったのだろう。そんなふうに、受けとめられなかった男の子の思い出がいくつもあって。森園勝敏の「エスケープ」を聴きながら、ケイちゃんのことを思い出した。ぼくが21歳くらいで、ケイちゃんは23歳くらいだったかな。ふたりで、夜中に、四条河原町の阪急電車の出入り口のところで、肩を寄せ合って、くっちゃべっていた。お互いに自分たちの家に帰るのを少しでも遅くしようとして。「エスケープ」「ひげ、そったの?」「似合ってましたか?」
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