エデン〈小噺〉、他/道草次郎
 
 そしていつしかその動物はエデンの園というところに運ばれました。たった一匹でうずくまっているその姿はまるで不気味なバケモノのなれの果てのようでした。手足をもがれメスでもオスでもないそのからだは、異容というほかはありません。神さまは遠くからその動物を見て深くうなずきました。

(うん、これだ。こんどは上手くいきそうだぞ)

 禁断の実がなるりんごの木の下で、もぞもぞとうごめくその肉のかたまりは考えることはおろか声をあげることさえできません。ただその顔にはどこか見覚えのあるところがありました。ずっとむかしひとつの世界をわがもの顔で闊歩していたあの生き物にとってもよく似ている・・・。

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