詩の日めくり 二〇一五年四月一日─三十一日/田中宏輔
、ぼくを引き裂く。
ぼくの目は、引き裂かれた自分の皮膚を見つめる。
流れ出たおびただしい血を吸い込む地面も、また、ぼくなのだった。
がくんとなった小舟から見上げた岩頭の藤の花の美しさ。
茂みから、ふいに飛び出てきた鹿。
むかし、付き合ってた子と
奈良公園に行ったら
夕方だったけど
鹿がいた。
暗闇に近い薄暗がりから
ぎゅっと頭を突き出す。
鹿って、大きいんだね。
「こわ〜。
鹿って、こんなに大きかった?」
「ほんまや。
大きいなあ。」
「鹿せんべい、持ってへんから
怒っとんのかな?」
「そうかも。
はよ
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