詩の日めくり 二〇一五年四月一日─三十一日/田中宏輔
いちばんの理由じゃないと思うけれど
というのは、小学校にあがる前から
家じゅうのいたるところにマジックでいろんな模様を描いたりしていて
あの父親は、芸術だけには、奇妙な趣味があったので
ぼくのそんな行為を叱ることはなかったのだけれど
父親の絵や写真や映画の趣味の影響もあるのかもしれない。
しかし、市のコンクールで描いたぼくの絵は
いまのぼくの視点と、そう変わらないものだと思う。
動物園で写生したのだけれど
ぼくは、動物園の飼育係のひとが
豹の檻を洗っているところを見つめ
そのあと豹が入れられて
檻のなかの床のくぼみに
まんなかのコンクリート
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