詩の日めくり 二〇一五年四月一日─三十一日/田中宏輔
 
ートの水溜りのはしっこに写った豹の顔を右端に
塗れて光った水溜まりを中央にして描いたのだった。
この寒さでは、雪も白さにふるえていることだろう。
あの檻のなかの水溜りも、水溜りに写った豹の顔もふるえていることだろう。

  〇

みんなが見ているまえで
ケーキを切り分けるみたいに
ぼくはピリピリしていた。

  〇

病院の入り口の手すりに椅子が鎖でつながれている。
ステンレスの手すりに、ちょっと上質の背もたれのついた藤色の椅子。
霧状の犬が、目の前を走り抜けた。
藤色の椅子に、ぼくは腰を下ろした。
ぼくの視線も、病院の手すりにつながれたまま
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