美しいヘマのしでかし方/ただのみきや
 
は赤く
心はこころを見つけられずに
肉体のそこ彼処「もういいよ 」の声

言葉の前で自分を誑(たぶら)かし
門をくぐればさめざめ雨
失くしも落としも盗られもせずに
ふり返る門の裏 同じ言葉の知らぬ顔






レコード

天秤に乗せられた二つの時間が
互いの波紋で殺し合う
聞こえるのは血の汽笛ではなく
氷に走る亀裂
腕を折られても微笑んだままの
死体に咲いた感嘆符

わたしの中に鉄の線路はない
燃え立つ窯も黒い機関車もない
あるのは冬の樹木の中で凍りつく水脈の絃
枯木を裂く沈黙の膨張

だが列車の幽霊が夜更けに訪れて
わたしの
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