ある巨人の話/由比良 倖
かと運転手達は不安です
彼女は小さい静かな人間でした
にもかかわらず彼女は一日にして巨人になりました
真夜中、男の巨人の傍を一人の若者が歩いていました
恐いもの知らずの若者です
男の巨人は若者を指先でつまむと
自分の口の中にひょいと放り込みました
誰も見ているものはいませんでした
女の巨人だけがそれを見ていました
女の巨人は本当に何も食べませんでした
ただ雨粒を舐めるばかりでした
ある晩、男の巨人はまた人間を食べようとしました
太った老人が歩いてきたのです
男の巨人は太った老人を折って殺しました
女の巨人はその様子をじっと見つめていました
男の巨人は食べかけて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)