ある巨人の話/由比良 倖
けて思い直し
死体を女の巨人の方へ投げてやりました
女の巨人はそれに触ろうともしませんでした
死体を投げて返すことすらしませんでした
そのまま朝が来ました
太った老人の死体が女の巨人のすぐ傍に転がっていました
女の巨人は泣くことも笑うこともせずぼんやりしていました
男の巨人を見ることもしませんでした
集まった人達の視線を身じろぎもせずに受けていました
女の巨人は大きな大きなトラックに乗せられて
どこかに連れて行かれました
男の巨人はそれからも一人で生き続けました
寒い季節が来ました
男の巨人の上には冷たい雪がしんしんと降りました
男の巨人はまっ白な息をひとつほうっと吐くと
そのまま動かなくなりました
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