夜、夜/田中修子
音を
薄うい、半透明の花びらのような鼓膜がふるえていることを
おもいながら、体をお布団に、沈みこませていく ゆっくりと
どこまでも、どこまでも、数千メートル 数万キロも 浮かびあがって
さぁおいで、さぁ、
夜……夜、あなたの頭蓋を糸のこぎりでひらくと
うすくれないの小さな、異国風の天幕があって
飾りのばら色とみず色のポンポンがかかっている。
燭とり童の置いてった、月の光のろうそくが
天幕を内側から照らし出した、と、消えた。
ふっ と 消したのは しびと 愛しいひとの愛しかったひと、
振り返っては、だめよ
と、あなたの体が闇になり、とろりと、とろけだした
あたため
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