詩の日めくり 二〇一五年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
支えてやるんだ。
空の色が変わりはじめたよ。
さあ
みんな、犬になろう。
犬になって
飼い主に、元気をあげよう。
飼い主は、だれだっていいさ。
ためらいは、なしだよ。
犬は、ちっともためらわないんだから。


二〇一五年三月二十九日 「金魚」


きみの笑い顔と、笑い声が
真っ赤な金魚となって
空中に、ぽかんと浮いて
ひょいひょいと目の前を泳いだ。

コーヒーカップに手をのばした。

もしも
その真っ赤な金魚が
きみの喉の奥の暗闇に
きみの表情の一瞬の無のなかに
飛び込み消え去るのを
ぼくの目が見ることがなか
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