詩の日めくり 二〇一五年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
やす。
季節がめぐるごとに
礼儀正しい両親を生やす。
両親が生えてくる樹。
樹はときおり
自分が歩いてきた道を振り返る。
そこには光がきらきらと泳いでいて
その間を影が満たしている。
違った時間と場所と出来事の光と
違った時間と場所と出来事の影が
樹に見つめられている。
光は薄くなったり濃くなったり
影は薄くなったり濃くなったり
あった光と
なかった光が
あった影と
なかった影が
樹に見つめられている。
見るように見る。
見るように見える。
見えるように見る。
見えるように見える。
そんなことは
じつはどうで
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