詩の日めくり 二〇一五年三月一日─三十一日/田中宏輔
、無理かもしれない。
二〇一五年三月三日 「ぶふう」
ぶふう
ぶふう
って、彼女の髪の毛のなかに息をこもらせる。
ベンチに坐っていると
向かい側のベンチで
高校生ぐらいの男の子が
おなじくらいの齢の女の子の後ろから
ぶふう
ぶふう
って、髪のなかに息をこもらせる。
そのたんびに
女の子の頭が
ぶほっ
ぶほっ
って、膨れる。
なんども
ぶふう
ぶふう
ってするから、そのうち
女の子の頭がパンパンに膨れて
顔も大きくおおきくなって
歯茎から歯がぽろぽろこぼれ落ちて
ひみつ
と呼びかける。
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