過去から歩いてきた血液 他一篇/道草次郎
微かに赤みがかった黒い細片がとれる。それをピンセットでつまんでチャックの付いた透明なビニール袋に入れる。厳重に封をして封筒にしまう。封筒の宛名はどこかの科学調査機関。依頼項目は成分分析。分子的構造をなるべく詳細に。そして、返信用筒がとどく。一連の化学式と無機質な専門用語の羅列。その化学式の情報をまた別の機関へファイル送信。その機関の名は「ネット3Dプリンターサービス」。やがて宅配便がとどく。入っているのは、例の化学式をそのまま立体的に造形したチタン製の模型。その模型を自室中央のテーブルの上におく。そして全裸となり、マサイ族のTwitter仲間から国際便で譲り受けた槍を手にし、延々と朝が来るまで祈祷
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