落穂/道草次郎
大陸にしがみ付く
小鼻を摘んで離す
富士山をつまむと
乾いた指に少し脂がつく
真っ白な冠雪が舞う
短い前髪をうえから押さえ付け
ツンドラ地帯を吹き抜ける風はやがて
そのまま下へ眼窩を感じ
桂林のタワーカルストを抜け
鼻梁を辿り
ピレネー山脈を越え
唇の湿りを抜け
南アジアの湿原を渡り
下顎まで来てとまる
南極大陸へと到達する
「灯台の」
意識を手にした手が生命を裁縫している。ブラックベリーの染みのような血液を思い描き、イギリスへ行こうと、小鳥のような器用さでみずからを埋設して。汲み尽くされた井戸の底に棚引くダークネス。洪水はこ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)