落穂/道草次郎
 
大陸にしがみ付く

小鼻を摘んで離す
富士山をつまむと

乾いた指に少し脂がつく
真っ白な冠雪が舞う

短い前髪をうえから押さえ付け
ツンドラ地帯を吹き抜ける風はやがて

そのまま下へ眼窩を感じ
桂林のタワーカルストを抜け

鼻梁を辿り
ピレネー山脈を越え

唇の湿りを抜け
南アジアの湿原を渡り

下顎まで来てとまる
南極大陸へと到達する


「灯台の」

意識を手にした手が生命を裁縫している。ブラックベリーの染みのような血液を思い描き、イギリスへ行こうと、小鳥のような器用さでみずからを埋設して。汲み尽くされた井戸の底に棚引くダークネス。洪水はこ
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