帽子/墨晶
朕の王國に於いて帽子を數える單位は、諸外國で云えば「仔象の壹萬分の壹頭」と云う意味の「ザノーピス」を用い、愛して止まない我が臣民たちにもそれに從って貰っているわけだが、どう云う譯か帽子を被る者なんぞ朕の他に絶えて居らん。
禁止しているどころか寧ろ推奬しているくらいなのだが、何故か誰もが帽子を敬遠しているようなこの現?故、不本意にも朕が「帽子王」と稱される運びとなったのである。しかし、はっきり告白するが朕が所有している帽子は精々貳拾ザノーピス程である。
周知であろうが、帽子と云うものは、不思議な仕方で出現、また存在する。あるときは、忘れられたかのようにソファの隅に、また、クシャクシャになってコー
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)