詩の日めくり 二〇一五年一月一日─三十一日/田中宏輔
 
るなあ、これでは、あべこべだと思って、ふとわれに返ることがある。一日じゅう、文学作品ばかりに接していると、そういった逆転がしょっちゅう起こっているのだった。ところで、これまた、ふと考えた。しかし、現実に接している人間でも、じっさいに接して、その人間の言動を見て、聞いて、触れて、嗅いでいる時間は、その人間といないときよりずっと短いのがふつうである。したがって、現実に接している人間でも、自分がその人間の特性のすべてを知って接しているわけではないことに注意すべきだし、その点に留意すると、現実に接している人間もまた架空の人間と同様に、その人物について知っていることはごくわずかのことであり、それから読み取れ
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