詩の日めくり 二〇一五年一月一日─三十一日/田中宏輔
って、その指のにおいをかいでみた。
「くさっ。」と言うと
「それが人間のにおいや。」と言った。
テレビででもやっていたのだろう。
ぼくがまだ中学生のときのことだ。
中学生の同級生とのやりとりだ。
中学生が「人間のにおい」などという言葉を思いつけるとは思えない。
そのとき、友だちに確かめたわけではないけれど。
それから40年以上たつけれど
ときどき鼻の頭のあぶらをティッシュでぬぐって
そのあとティッシュの汚れた部分を見て
そこに鼻を近づけて
そのいやなにおいを嗅ぐことがある。
くさいと思うそのにおいは、ずっと同じようなにおいがする。
「人間のにおい」って言っていたけれど
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