詩の日めくり 二〇一五年一月一日─三十一日/田中宏輔
 
るが、それと同時に、他人もまた彼もしくは彼女の人生という劇においては主役であり、ぼくたちは彼らの人生においては端役であるのだと。


二〇一五年一月六日 「磔木の記憶」


 木の生命力はすごくて、記憶力もそれに劣らず、ものすごいものであった。イエス・キリストの手のひらと足を貫いて打ち込まれた鉄釘の衝撃を、いまでも覚えているのだった。さまざまな教会の聖遺物箱のなかにばらばらに収められたあとでも。


二〇一五年一月七日 「弟」


 お金ならあり余っている実業家の弟からいま電話があった。「あっちゃん、生活はどうや?」と言うので、「ぎりぎりかな。」と言うと、心配して援助してく
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