檻(掌編)/道草次郎
直の係員に取り押さえられたわけだが、そのとき、男と係員とのあいだに次のようなやり取りが交わされた。
「離せっ!はなせっ!どうしても格子を壊さなきゃならないんだ!」
「酔ってるのか、おっさん?それとも狂人か?」
「違う!わたしは、みんなに真実を教えてやらねばならんのだ!」
「そうかいそうかい。そりゃ大そうなこったなおっさん。さあ、こっちへ来るんだ」
「いやだっ!わたしに触るな、愚か者め!お前にはアレが見えないのか?あ、あの怖ろしい光が」
震える声でそう言いながら、男は冴え渡った夜空の一地点を指差した。そこには漆黒を背景にして煌煌と輝く、青い光が見えた。
「知ってるよ。俺たちだっ
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