檻(掌編)/道草次郎
 
だって檻が壊れりゃ修理するさ。あんたみたいなのだっていることだしな。さあ行こう、おっさん」

 闇夜を貫かんばかりに男の絶叫が響き渡ると、園中の動物たちが一斉に眼を覚ました。興奮のあまりギャーギャーと走り回る動物たちが、檻の内壁やらに狂ったように身体をぶつける凄い音がこだました。それを聞きつけて、どこからかたくさんの係員が集まってきた。彼らに向かって先ほどの係員が次々と何か指図をしている。男は恐怖のあまり叫ぶことさえ忘れその係員にしがみついた。
 「ど、どうして夜の動物園にこんなにたくさんの人間がいる!?」

 係員は可笑しくてしようがないという風に男を見つめた。
「どうしてって、あのギャーギャー喚いてる連中の息の根を止めるためにいるのさ」




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