哀愁の強行軍/ただのみきや
 

沈黙を頬張って
夢みがちに線を描く爪先
 刺す虫のように反り返る
光の錐 振る鈴の眩さ
凍った脳に亀裂が走る
 歌うような黒曜石の魚たち

言葉の灰と紙魚の死骸に埋もれた
眠らない眼がなにも見ていないように
誰かの夢を夢見ている孤独は
 擬態したまま熱を失くしてゆく
朝明けにさまよう錯視の果て
 自らの燃え滓を河に流しながら

病について語り合う
貝殻の中のコスモポリタン
長い睫毛はみな喪に服し
感覚を炙ることで
 魂の処女性を取り戻そうとする
言葉と自我の剥離を模索して

思考のバグが増加して
 嘔吐するスペースを奪い合う
一から自慰を学び直すよう
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