哀愁の強行軍/ただのみきや
ように
弾き飛ばされて暗い隕石となるまで
心臓からひとつの刃物が発芽するまで
か細い指先が無意識になぞる輪郭
降り積もる顔
壊れた石の指 錘のない時間
ナイフでこじ開けたノートの
死蝋化した詩
耳朶を咥える煙の囁き
トンネルの向こうに見る一点の錯乱
あいもかわらず
一羽の鳥が雪の上で死んだように
ひとつの年が終わり
新たな鳥を空に見上げることもなく
ただ目を反らして迎えた新しい年
不安だから知りたがる
苛立つから論じたがる
断罪の的を見つけたがる
答を出したがる解決しないのに
途切れなく果てしない流れの
手には負えないうねりの中で
上手く泳げなくても溺れはせずに
文句が言えるなら息もある
死んだ鳥の喪に服する
翼の折れた鳥を介抱する
生き方に正解はないが
ただ眺めわたしはただ目を閉じる
《2021年1月3日》
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