詩の日めくり 二〇一四年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 
いたのだけれど
まあ、早い話が
歩く女コジキってとこだけど
あるとき、父親と、すぐ下の弟と
祇園の石段下にあった(いまもあるのかな)
初音といううどん屋さんに入って
それぞれ好きなものを注文して食べていると
その100円オババが、店のなかに入ってきて
すぐそばのテーブルに坐って
財布から100円硬貨をつぎつぎに取り出して
お金を数えていったので
びっくりした。
「あれも、仕事になるんやなあ。」
と父親がつぶやいてたけど
ぼくは
ぜんぜん腑に落ちなかった。

河原町のジュリーと呼ばれていたコジキがいた。
死ぬ半年くらい前に

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