詩の日めくり 二〇一四年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 
を買ったときのレシートが道に落ちたので
拾おうとして、しゃがみかけたら
学生服姿の高校生の二人組のうちの一人が
さっと拾い上げて
ぼくに手渡してくれた。
きっと、ぼくの足が不自由だと思ったからだと思う。
人間のやさしさって
感じる機会ってあんまりなくって
あんまりなかったから
電車の扉がしまってからでも
その高校生たちの後ろ姿を
見えなくなるまで
ぼくの目は追っていた。

二〇一四年十二月九日 「生きること」

 生きてみないと、意味がわからない。生きていても、意味がわからない。生きているから、意味がわからない。意味がわからないけれど、生きてい
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