冬の花びら時の河面/ただのみきや
の内壁を蔦となり蛇となり
上って行った
無数の手の囁きが踊りのように
濁った水に映った顔をあやしていたし
雪は光を石灰のように撒き散らし
青くくぐもった凹凸は死者を装ってもいた
苦痛や悲しみを忘れられる
狂女の微笑みにも似た恵みの季節
奪って行った どこか遠い彗星が
黙したまま血の軌跡を延々と引きながら
赤子を抱いている
気が付けば
頬ずりして
顔を埋めるぬくもりの
日蝕に
沈む眼が裏返る
後頭部を透過して遡上する
*
溢れかえる瞬間と記憶だけが熱い涙のように
時の塔を滑り落ちてつめたい冬の真中へ
離れ離れに生まれ落ち
見知らぬ二人にな
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