冬の花びら時の河面/ただのみきや
わり
見開き一面の白紙
盲人
盲人でなければ
一冊の本を暗闇で読むことはできない
見えている者は
見ているものの内壁を手探りで訪ね歩くことはない
それが何かを知らない者だけが
無垢な心で味わうだろう
だがいったい何を知っていると言えるのか
言葉で説明出来るというだけで
物語
朧げに光を宿す
摺りガラスに
隔てられ
愛し合った
血と冷気
捧げながら
奪われて
駆け引きを知らない
朝の空
滲むこころのまま
*
一本の樹木の中を水が巡りながら上昇するように
わたしたちは互いの回廊の内
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