黒猫と少年(4)/嘉野千尋
*鉱石ラジオ
暇をもてあました少年が、ふと思いついて鉱石ラジオを作った。
黒猫はそのかたわらで目を細めてその様子を見守っていたが、
いくらたっても何も聴こえてこない。
「また失敗したのね」
黒猫はお気に入りのブランケットにくるまって身を丸めたが、
少年は飽きる様子もなく鉱石ラジオの前で今か今かと待ちわびている。
しばらくすると、天窓から、すっと月光が差し込んだ。
「『七月のアリア』だ」
月光の揺らぎとともに始まったその調べの向こうに、
黒猫はかすかなかすかな波音を聴いた。
黒猫の故郷は、遠い遠い海の向こう。
波
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