ずるずる/後期
ない。「ほんとに、あんたのおとーさんは、意地悪な人だよ」「万馬券当てたくせに」横で、ずるずるが、また始まった。話して分からないなら、ぶっ飛ばすしかない、と、娘を見る。娘はちょっと眼を離した隙に、成長して、いっぱしの色女になっている。どうも、ばぁさんとぐるらしい。これはちょっと待てよ、煙草を燻らしながら、眩い窓の向こうの往来を見ると、獣じみた老若男女が入れ替わり立ち替わりしている。騒々しい。店の扉が勢いよく開いて、少年が駆け込んで来た。小脇に抱えた紙を店内に散撒いて、去って行く。号外なのだと思う。手に取ると白紙なのだが、ついに戦争か…と遠方の弟の事が気になりだした。ばぁさんが、にんまりとして、指を四
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