幕の内弁当/吉兆夢
を高く鳴らして倒れこんだ障子のはらのほのあかるい幕の内からセスナは旅立っていきました。
のはらはとてもしずかです。
開け放された私の耳はしんしんと雪で埋もれて
あなたも今ごろ、
窓から見下ろす傾いだ地平をマツポックリやコロポックルと転がっていった
いつかの笑い声を耳鳴りのなか
とおく にぶく 聞いている
、そんな気がしています。
そこからこの灯りは見えるのでしょうか。
白米みたいにまっしろな雪原の
梅干しというにはたよりない赤い障害灯にするすると
粉雪のスクリーンが引き下ろされていくさまは
風に舞う鰹節みたいで、
(掻き分けても掻き分けても見つからない
どこにも
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