隠喩のような女たち/ただのみきや
し
千切れるほど張り詰めることで
暗く 灯る
古びた夢のデパート
*
あなたを見つめるものが
あなたの顔に映り込む
小さな池を覗き込んだ
樹影が縁取る空のように
器を空(から)のままで満たしている
己を隠した光の面差し
女盗賊のために
崩れる砂の身体
己という圏を失くし
記号の砂塵が地を暗くする時
母性の爪先へ
赤い花びらが落ちて来た
紙飛行機を咥えた
スフィンクスを追いかけて
呼吸と眼球の乱舞
唇に触れる熱砂の蛇
薔薇色の吐瀉物と
鳥のように旋回する
笑いの抑揚
陶工の手の中の亀
その冷たい甲羅から
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