隠喩のような女たち/ただのみきや
 
道程

一つの結晶へ
近づくほどに遠ざかる
道程の薄闇
ああ目を凝らせ
不安を透かした薄皮を
一枚また一枚と剥離させ
焔のような白い裸婦像が
現の真中の空ろを炙る

  *

とある時が孵る
気温も風向きも知らずに
出来事は
ひとりでに織り上がる
緻密なタペストリー
己を知らずに疑わない
得意げな童顔のように
それは在ってすでに無く
隙間なく生まれ続けて
途切れなく死に続ける

  *

見えない弦に肌を欹てて
雀のような素振り
なにかを知る度
知らぬ者よりいっそう愚かに
可視化にもがいて
内に開いた底なしの
井戸へ錘を垂らし
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