人間アレルギー(短編小説バージョン)/月夜乃海花
 
も入っていないクラシックの方が楽だった。最近はベートーヴェンの月光が好きだ。ベートーヴェンはいつしか聴覚を失っており、どこか私と同じように見えたからだ。ただ、静かな月光が流れる。アイマスクをしながら、静かに考える。いつになれば治るのか、いつになれば普通に戻れるのか、ありきたりなことだ。ただ普通に人と話すことが出来て、笑えたあの頃に戻りたい。と思いつつも、もう何十年の昔のことのように思えた。人の顔というものをずっと見ていないと自然にこうなるのだ。
あれからまた数週間が経った。それでも、私にとっての日常は変わらなかった。いつものようにヘッドホンとイヤホンと共に生き、文字だけで人と接するだけの生活。私
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