ピーナッツバタートースト/ホロウ・シカエルボク
んてもう全然わからない。踏みしだかれた埃がフローリングに吹雪の絵みたいに張り付いて穴だらけの床。五階建ての二階だから本当の雨漏りだけは味合わずに済んだ、そんな部屋で暮らしているくせに、パンを焼く機械だけはフランスのものすごくいいやつを食卓にでんと置いていた。おんぼろの部屋でピカピカに輝いているそれは、あたしからすればスラムに降り立ったUFOかタイムマシンみたいに見えた。マリはそれを買い、上等のパンとコーヒーとバターの為に週に三日、手だけで男をイかせる仕事をしていた。まだ十八になったばかりだっていうのに。その仕事に行き着くまでにどれだけの「なんだって」をしてきたのかは謎だった。でも、きっとそんなに偉
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