母が壊れてしまったあの日から/
 
ないものが大半で、ただ言葉もなく静かに時間がすぎるのを待つ時間も長かった。

そして一つだけ、これもまた馬鹿みたいに鮮明に残っている記憶がある。
静けさに包まれた病室で、窓の外を眺める母からこぼれおちた言葉。

「私の人生はなんだったんだろう。」

何も答えることができなかった。



・あの日から


母は1月13日の金曜日に癌宣告を受けた。3月13日の金曜日に容体が悪化し緩和ケアの施設に移った。 
そして呼吸をやめてしまったのは4月2日だった。
なんだか笑えてしまうぐらいに不吉な数字が並んでいて、いっそ命日が4月1日であれば嘘にしてしまえたのかな、なんてことを思
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