詩の日めくり 二〇一四年十一月一日─三十一日/田中宏輔
わいにしてくれるスパイスのようなものだったのだろうかと、いまとなってはそう思う。靴とかもすべてオーダーメイドのおしゃれな父親だった。錦市場のその喫茶店「木下」で飲んだアイスコーヒーはほんとにおいしかった。漏斗状のプラスティック容器を使って、アイスコーヒー用に焙煎されたコーヒー豆の粉を紙フィルターに入れ、氷をたっぷり入れたグラスのうえにそれを置いて、細く湯を注いでいったのだった。とても香り高くて、行くたびに、その香りのよさに目を見張ったものだった。その店のママもいまは亡くなり、その店もないらしい。ぼくも祇園に住んでいたころは、父親とよく行ったものだったが、家を出てからは、下鴨に住んでいたので、錦市場
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