詩の日めくり 二〇一四年十一月一日─三十一日/田中宏輔
露出している白黒写真だった。書斎にはほとんどありとあらゆる本があった。ほとんど外国のもので、なかにはゲイ雑誌もあった。薔薇族やアドンやさぶやムルムといった日本の代表的なゲイ雑誌があった。生涯において、女性の愛人しか持たなかった父親だったが、精神的には、男性にも魅かれていたのかもしれない。あるいは、単なる文芸上の趣味だったのか。継母は、女の愛人には厳しかったが、ゲイ雑誌は、単なる趣味だったと思っていたようだ。ぼくが父親の本棚にあるゲイ雑誌について尋ねると、「単なる趣味でしょ?」と言って笑っていたから。ぼくが翻訳小説に親しんでいるのは、父親の影響だろう。音楽の趣味も、父親の趣味と同じだ。ポップス、ジャ
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