銀河とスポーク/道草次郎
面に滴った。微動だにすることすらできない気がした。金縛りにでもあったようにじっとその場を動かずに居て、目の動きだけで周囲にウスバカゲロウの痕跡を追った。しかし、それはやはり見当たらなかった。目の前にはスポークのメタリックな輝きがあり、それは夏の朝の密度の濃い大気のなかに自らの存在を誇っているようだった。滴る松脂に注意をはらいつつ恐る恐る軒下の方へ寄ると、なんとはなしにしゃがむ。するとその瞬間、ベージュ色のモルタル壁に同化していたウスバカゲロウが驚いて飛びたった。まさか、と思った。たしかにスポークに巻き込まれたはずなのに。それをこの目でハッキリ見たのに…。軽いショックが一少年の脳をおそった。しかし、
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