銀河とスポーク/道草次郎
し、そんな事もいく時かが過ぎれば無論忘れ去られてしまうものだ。飛びたったウスバカゲロウの行方を追うこともなく、朝食と股引姿の父が待つ居間へと、若く燃える生命は勢いよく引き返して行った。ウスバカゲロウのことなど恰も無かったかのように。自転車はその後廃棄され新しいものに代わった。その新しいものもやがて古び捨てられた。朝鮮松も清祓いが執り行われたのち根元からばっさりと切られてしまった。少年も老い、幾度となく自らを捨てまたそれを得たようである。その間も、どこかでスポークは回り続けていただろうか。それを知るのは、おそらく星々だけである。
戻る 編 削 Point(2)