銀河とスポーク/道草次郎
 
やり眺めているとやがてウスバカゲロウは自転車に近付いてきた。そして、あまりに高速回転な為もはや一枚の不透明な円盤にしか見えないスポークにそのウスバカゲロウはみるみる吸い込まれてしまった。子供心に狼狽を感じたのを覚えている。しかし、それは狼狽というにはあまりにもか細い感情の波立ちであり、戸惑いという方が近かったかも知れない。すぐにゴムサンダルの裏でタイヤの回転を制しそこに見出されるであろうかつてウスバカゲロウであったものの残骸を探した。だが、残骸はどこにも見当たらなかった。しばしのあいだ不思議な気分にとらわれていると、頭上の朝鮮松の切り口から琥珀色した松脂が前髪スレスレ所をかすめコンクリートの地面に
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