悲しみは理由を求めている/ただのみきや
 
―完全消去

食べ物の好み
――リセットボタン

裸の 素の 自分
なにが残る

難民のように痩せて
ぽっかりと黒目の開いた幼子か
天使の如き純粋無垢な神の子か
本能のみの毛のないサルか

なにも残りはしない

自覚もなくたましいは空虚な風のよう
この無益な集積と縺れこそが「自分」
わたしの憎む愛して止まない「自分」





無力

教会の裏の駐車場
置かれたブロックに腰をかけ
高い声で歌いながら
シャボン玉を吹いていた
小さな背中

葬儀でいい子だったのに
弟の棺が炉に入れられた時
始めて暴れて泣き出した
ふっくりあかい
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