悲しみは理由を求めている/ただのみきや
 
かい頬

面会時間を終えて
戻る後姿の
入院着が大きすぎて
あまりに華奢で痛かった
四年生の頃の背中

家庭裁判所の椅子の上
裁判官に問われて
泣きながら必死に言葉をつなげた
固く張り詰めた十三歳の頬

今わたしの問いかけに
幼い頃と同じように言葉もなく
辛そうに俯いているおまえに
重なって見えるのは
楽しい思い出ではなく
内から突き破るような傷みばかり
大人になったおまえが
また幼子に戻ったようで
切なくて愛しくて
なす術もなくて
一緒に飲むことしかできない
解決も結論も棚上げしたまま
飲んで笑うことしかできない



                《2020年12月6日》









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