悲しみは理由を求めている/ただのみきや
 

腐乱した太陽を被っている
かつて語学教師だったピクト記号
フライフィッシングの軌跡
死を孕んだままの飴色の記憶を裂くと
小奇麗な女の感情の釣銭が赤と緑で
一斉に歩道を逃げて行く
品性のレシピを新聞紙で包んだ
露出狂の紳士が防犯カメラで
赤ん坊と母親を物色している最中
閉店したコンビニでは
位牌とサラダドレッシングが交配し
毛繕いを済ませたなにかが
黒々とわだかまっていた
発音できないエノキのような
偽ひらがなに侵食されて
脳は座標を次々失っている
歪な殻の中
入子状の夢から浮上を開始する
塩漬けの自我
解凍されて
孤独の振子で歩き続けるしかなかった

[次のページ]
戻る   Point(5)