悲しみは理由を求めている/ただのみきや
 

日常起こり得る不快な出来事に対し反射的に吐き捨てたり
呟いたりする 苦みで不快を相殺して爽快感すら得んとする
仁丹常習者の行為と近似





悲しみ

逆光に目を細めながら
わたしはリスを見ていた
住宅地の真っ赤に染まった生垣を
出たり 入ったり
素早く そして 不意の休符
確かにあれはリスだったが
わたしは憂鬱で悲しかった
消し忘れたランプが太陽の下
ぼんやり油切れを待っているように
叱られている子どもが何気に
糸のほつれを引っ張るように
わたしはリスを見ていた
リスなどどうでも良かった
他に術がなかった

 *

ゆるゆる透け
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